96年6月4日、ロイヤル社大阪支店開設のため大阪市北区のホテル阪急インターナショナルに滞在していた林社長のもとへ、許永中から
「田中森一弁護士のところに 至急行ってほしい」
と電話が入りました。
出向いた田中弁護士の事務所には、同弁護士のほか、キョート社の湊社長、川辺専務、許永中の秘書役となる田中久則・葡萄亭ワインセラー社長がいました。
田中弁護士の話は、先に交わした新井組株220万株と石橋産業裏書きのロイヤル社の額面約203億円の約束手形交換の協定書を実行し、同社が新井組の筆頭株主になるための手続きでした。
「この書類にハンをついといて」と言われて押したのは、新井組株715万株の譲渡予約契約書でした。
同席したキョート社の湊社長はその場でその715万株は、実は許永中関連会社の「第三企画」という会社にすでに譲渡していることを明かし、その手続きも必要だとしてハンコを要求してきました。
さらに、秘書役の田中久則・葡萄亭ワインセラー社長は社長で、別に270万株を預かっているとして、受領書にハンコを押すように言ってきました。
田中社長は、石橋産業裏書きのロイヤル社振り出しの手形を決済する時、合計985万株すべてを石橋産業側に手渡すことになる、と説明しました。
林社長はその説明をそのまま信じ、また田中弁護士が「この件はワシが全部管理しとるしワシが作った書類やから何の心配もいらんデ」と言ったことから、270万株の受領書にハンコを押しました。
1120万株の残り、135万株については占有率が30%を超える部分になるので、市場を通じて買ったことにしないと都合が悪いとして別途検討することになり、この日は譲渡契約は保留となりました。